オメガの注目すべきオリンピックモデルのコレクションから僕が選んだのは、クロノクォーツだ。なぜなら、このモデルは史上初のアナデジクロノグラフであるだけでなく、1976年にカナダの大都市モントリオールで開催されたオリンピックに合わせて発表されたものだからだ。僕は優れたアナデジウォッチが大好きだが、このフォーマットが生まれたのは、クォーツが地平線上に立ちはだかり古い世界の時計製造の伝統を消し去ろうとしていた、時計業界にとって大きな苦難の時代のことだった。
オメガは、1974年に発売されたマリン クロノメーターという前衛的なクォーツウォッチに見られる技術的な美しさと、1/100秒のラップタイムを計測するスポーティなクロノグラフを融合させた、70年代らしい新たなデザインを発表した。クロノクォーツは、オメガのCal.1611を採用した唯一のモデルであり、デジタルクロノグラフとアナログ時刻表示の両方を明確にコントロールすることができ、どちらの表示も同じ32kHzのクォーツ振動子を採用している。
“アルバトロス”という愛称で親しまれた1611は、一対の翼のように見えるバッテリーレイアウトと、オリンピックの計時装置のような読みやすく機能的なダイヤルレイアウトを目指していた。約51mmの幅をもち、左のケースサイドにはいくつかのプッシャーが配置され、当時の最新モデルであるスピーディ プロの2倍以上の価格設定がなされたクロノクォーツは、オメガと最先端の計時技術、そしてコンマ何秒を争うオリンピック界との関係をさらに強固なものにした。